オーバークロック時の動作上の問題点
大幅なオーバークロックをした場合、最初につきあたるのはヴァイオレーションパスの発生でしょう。これが大量発生するようだと、素人ではお手上げです。もっともヴァイオレーションパスの発生の度合いにより、症状も違うでしょう。もしBIOSでメモリカウントすらしないというのであれば、諦めた方がよさそうです。これはかなり重症といわざるを得ません。しかしOSが起動するが、すぐにハングするという程度であれば期待が持てます。症状が軽いといえるので、何か対策がありそうです。
ヴァイオレーションパスの発生はとりもなおさず、遅延が原因なので、これを減らせばいい訳です。えっ、そんなことできたら苦労ないじゃないと思われるかもしれません。確かに可能なのはほんのちょっとの減少ですが、不可能ではありません。
方法は電圧を上げるのです。電圧を上げるということはそれだけ電子の流れに力を与える訳ですから、遅延が減ります。もっとも電圧を上げれば、その分抵抗が増えるので、リニアに遅延が減るということではないですが、我々ができるほぼ唯一の遅延減少方法でしょう。
もっともOSの起動後、すぐにハングする訳ではなく、かなり経ってからハングするとか、エラーが頻発するという程度であれば、電圧を上げる必要もないかもしれません。次ぎから述べる熱対策で回避できる可能性が高いです。
さて電圧を上げた場合はなお更、そうでない場合でも最後の難関は熱です。周波数を上げるということはそれだけ多くの電子が同じ時間で流れる訳ですから、当然熱は余分に発生します。ましてや電圧を上げた場合は、ある意味無理矢理動かしている訳ですから、熱の問題はさらに大きいです。
熱がどのようにCPUの動作に影響を与えるかは難しい問題です。基本的にはやはり遅延が増すのでしょう。通常の導体は温度が上がると抵抗が増え遅延が増します。温度とは結局分子の振動ですから、当然電子の移動の妨げになります。ただ半導体の場合はむしろ遅延が減少する場合もあります。この原理は私には分かりません。しかしある程度をこえると導体と同じ理由で遅延が増していくようですから、やはり全体としては遅延が増すと考えていいようです。
熱に対してはとにかく冷やすしかないです。ある意味冷やせば済むことです。「冷やす方法は?」なんて野暮なこと聞かないでくださいね。風をあてる、水をかける、氷をつける、冷蔵庫に入れる。それは冗談としても基本的には普通考えられる方法を取ることになります。
通常でもCPUは小さな空冷のファンが着いていますよね。またヒートシンクという放熱用のフィン(エンジンのフィンと同じ原理)が着いている場合もあります。これらを大きなものにするだけでもかなりの効果はあるようです。雑誌の実験などではよくケースをあけて家庭用の扇風機で冷やしたりしてますよね。本当に大幅なオーバークロックをやりたいならこのようなことも辞さないという覚悟はいると思いますね。中には熱帯魚を飼うための装置を改造して水冷に挑戦している人もいます。
しかし比較的簡単で効果も絶大なのが、やはりペルチェ素子でしょうね。\1000から買えますし、逆に冷え過ぎで結露の心配をしなければならないほど強力なものも\3000くらいです。ただ強力なやつは電気を食う(100Wを超える)ので、使用する場合は電源を大きなものにしなければならないかも。
外部周波数が100MHzくらいになってくると、結構いろいろなところに問題が出てくる場合があります。ケーブルをちょっと短くしてみたりとかでも成功、不成功を左右する場合があります。特にメモリはSDRAMになって相性の問題がうるさくなり、チップや基盤の違いで、オーバークロックの成否を非常に左右します。所謂相性なので、このチップがいいとは一概には言えません。あるマザーボードでは大変いいチップでも、別のマサーでは全く使えないという場合も決して珍しくはありません。実際私がAOpenのAX59Proで遭遇したメモリの相性問題をこちらで述べているので参照して下さい。
メモリはパフォーマンスにおいてそれ程重要な位置にはいないのですが、パソコンの中で重要な働きをしているには変わりないので、肝心なところで結構動く動かないを決定するキャスティングボートを握ることになります。メモリは侮れません。オーバークロックを目指す人はチップや基盤の情報に目を光らせる必要があります。
メモリと同じくらい、オーバークロックの成否を決定するものに電源があります。こちらはメモリ以上にパフォーマンスにおける重要性は低いのですが、オーバークロックの世界では見逃せないものです。やはり外部100MHzにもなってくると、全ての大元である電源の微妙な揺らぎが無視できないものになる可能性があります。ただし大抵問題になるのはATX電源の場合です。このへん私もまだよく調べていないのですが、電源の交換で全然動かなかったものが、いとも簡単に動き出したという話はあちこちで聞きます。